映画「海洋天堂」

順序が前後してしまいましたが、少し前に映画「海洋天堂」見てきました。いい映画だったなぁ…。
親子もの超苦手な私が、素直に観れた。
障害者と死を目前にしたその親という題材にもかかわらず、お涙頂戴な演出なく、ありがちな社会的弱者への賛美に走ることもなく。
親亡き後の障害を持つ子の将来というテーマは重いが、あくまで普遍的な、親が子の未来を思う気持ちにフォーカスしていたところが良かったのだと思う。

自分が余命幾許もないと知った父親は、当初こそ絶望して心中を図ろうとするが、失敗に終わって後は、ただひたすらにわが子の生きる術を探し、伝えようとする。
バスの乗り方、買い物の仕方、仕事のやり方。同時に、これからも、いつでも、側で見守っているよというメッセージを必死で伝えようとする。生きろ、生きろ、生きろ、生きろ…
自分はもう直接守ってやれない、もたれかけさせてあげることもできない。できることは、背中を押すことだけ。

もちろん、それでも現実からすればキレイにまとまりすぎという面はあると思う。
「最終的に」感じの良い施設が見つかるとか、子の雇ってくれる先が見つかる、なんてことこそ、実際は厳しかったりするのだろう。
ただ、そこに至る背景が、「聖なる心の持ち主によって」「あまりに可哀想な主人公達の境遇を見かねた神様の情けによって」もたらされるというおとぎ話ではなかった。
父親の人柄、日頃の働き振り、働きかけによる信頼関係の構築を経て、その子のことも見守ろうという人達が出てきた。
このあたりもよかったな。

愛する者の未来を何とか少しでも照らしてやりたいという気持ち。
映画のエンドロールで「すべての平凡な偉大なる父親、母親へ」という(ような)一文が記されますが、まさにそこに尽きると思いました。

http://www.crest-inter.co.jp/kaiyoutendo/

映画「父の初七日」(父後七日)

台湾映画「父の初七日」(原題「父後七日」)を観てきました。
これがかなり面白かった。
面白い…興味深い、という意味でも、笑える、という意味でもです。

突然亡くなった父の葬儀までの7日間を、田舎で父と暮らしていた兄、都会でキャリアウーマンとして働く妹、同じく都会の大学生である甥っ子の3人を中心に描くのですが、まず、現代の先進国の、都会と田舎の距離感の描き方がとても上手い。
いや、私自身は祖父母時代から大阪ぐらしで、所謂田舎というのはないのですが、きっとこんな感じだろうなーという感覚。
田舎にはよくわからない風習があり、面倒くさい人間関係がある。自分の故郷だからそれなりに愛情を持って受け入れているんだけど、なんとなく距離感も持っている、そんな感じ。

それから、葬儀のこと。日本に住む私たちも同じだと思いますが、はっきり言って、葬儀の諸々の決まりごとなんてよくわかりません。
身内が亡くなったら、何が何やらわからぬままに、親戚や葬儀屋さんの言うままに事が進んでいって…というのはよくあるパターンじゃないでしょうか。
その、本人たちの、真面目なのによくわからない…という感じがとてもよく伝わってきました。
肉親を失った悲しみに向きあう暇もなく、次々押し寄せる出来事に振り回される兄妹の様子に、可笑しさを感じたり、共感したり。
大切な当人たちの感情を置き去りに、形だけの風習にこだわるなんて…と憤る向きもありましょうが、私は、めちゃくちゃかもしれないけどこれでいいんじゃないかなぁなんて思いながら鑑賞しました。私の父が亡くなった時のことについて、後から母が言っていたことを思い出したからです。
(日本の仏式の場合)お通夜、告別式、初七日、一周忌、三回忌…という行事が続く。人が集まる行事が、最初は密に、そしてだんだん時間を置いて行われることになっている。集まってくれる人数も、徐々に少なくなっていく。それは、単なる宗教的な決まりごとに見えて、実際遺された遺族が悲しみから立ち直っていく過程に沿っているんだと。
儀式というのは、本人のためであるというフリをしながら、実のところ周囲の人間のためにあるのかもしれないなぁ。葬儀に限らず、結婚式や成人式なんかも、みんなそんな側面が実は大きいように思います。

あと、日本人にとって興味深いのはこの映画で描かれる葬儀が(台湾では一般的なのかな?)道教のものであるということ。
道教について全く知識がない人間からすると、ここはひたすら興味深い。
泣き女?葬儀に楽隊が登場?お経が賑やか!弔客にはこう対応するのか…などなど。

ここに、次々とやってくる関係者がそれぞれの思惑を持って(もちろん本人たちはそれぞれ真剣)絡んでくる様子を、客観的に映しだすので、共感しながらも、興味を惹かれながらも、やっぱり笑ってしまうのです。

「客観的に映しだす」というところは、この映画の一番のポイントだったと思います。
都会と田舎の距離感、現代に生きる私たちにとっての、葬儀という伝統儀式に対する距離感、肉親を亡くした人間の感情と、次々押し寄せる「現実」との距離感、父と娘の距離感、叔父と甥の距離感、昔の恋人との距離感、世代間の距離感。
決して冷たいわけでなく、それぞれにそれぞれを受け入れながら、でもちょっと距離がある感じ。
その距離感の捉え方の上手さが、ベタベタの家族ものでも冷たすぎる現代人ものでも、単なるコメディでもない、良い作品を作ったのじゃないかと思いました。
馴染みのない文化を知りながらも、笑え、共感してしまう。
おすすめ作品です。

蛇足。
少し話が逸れますが、ここのところ、しばしば心に浮かぶキーワードに「同時代性」というのがあります。
海外の映画を見たり、海外の若者〜同世代の言葉を見聞きしたりするにつれ、感じる、同時代性。
一昔前なら、例えばヒット曲一つとっても伝わるのに時間があったはずです。もしくは、「遅れている自分の国(日本)」に対して「憧れの最先端の国(アメリカだったりヨーロッパ諸国だったり)」という図式があったはずです。
でも、今はほとんど同時に、流行を共有している。もちろん、同時にそれぞれの地域性というのもあるんだけど、確実に全世界同時に共有している空気というのがある。
このことは1年くらい前に見た映画ドイツ映画「ソウルキッチン」でも、先月の大阪アジアン映画祭で見たマレーシア映画「ナシレマ2.0」でも感じました。台湾原住民ミュージシャンsumingの「僕は原住民だけど原始人じゃない。同じ時代に生きてるんだ」という言葉も印象的です。
今回も、台湾(…は、外国の中では比較的日本に近いものがあると思いますが)の都会を生活拠点とするほぼ同世代の感覚を、ほぼ違和感なく共有できたと思います。
この同時代性というのだけは、上の世代が一度も持たなかったもの。この空気をリアルに吸っている世代が、今後の世界に何かしらおもしろい影響を与えていくんだろうという予感がするのです。

映画「愛你一萬年」

随分経ってしまいましたが、3月に大阪で開催されたアジア国際映画祭で、2本映画を観てきました。
そのうちの一つが「愛你一萬年(一万年愛してる)」です。

華流ファンの方にはF4のヴィック・チョウ(周渝民/仔仔)と言えば超有名なんでしょうか。
映画祭チケットもまたたく間に売り切れ、追加上映分を観ることができました。
私の動機はいつもどおり、台湾の映画だから!なのですが。

ヴィック・チョウ…漢字表記は周渝民、ヴィックは台湾の芸能人がよくつけている(ビビアン・スーみたいな)英語名みたいな感じで、仔仔(ザイザイ)はニックネームです。なんかいろいろあってややこしいですねぇ(笑)
会場にはさすが、彼の人気を反映しておばさま、いえおねえさま、いやもしかしたら同年代か?の女性がわんさか。
お茶の間でもないのに映画中にこそこそしゃべる人が複数いたのには閉口しましたが、映画は大いに楽しめました。

所謂ドタバタ恋愛コメディーなのですが、テンポがよく、お気楽に笑える映画。
主人公の日本人の女の子(みかん=加藤侑紀)が関西出身という設定だったのですが、これが正解だったんじゃないかと。関西ノリと台湾ってなんか合う気がするんですよね。身びいきかもしれませんけど。なかなか演出が難しいと思われる、関西ノリが嫌味なく取り込まれててうまい!!監督(日本人)はきっと関西の方に違いないと思って調べたら、やはりそうでした。滋賀出身の北村豊晴監督!パチパチパチ!
主演の加藤侑紀さんは恋愛初期の女の子の可愛らしさとか、新卒で働き出したばかりの初々しさが上手でした。
仔仔も、わたくしはこの映画で、あ、男前やん、と認識(笑)。ちょうど今、BSで彼主演の「 痞子英雄 (ブラックアンドホワイト)」という刑事モノを観てるのですが、こちらでは役柄がエキセントリックすぎて(今後の展開で変わるらしいですけど)、ルックスにフォーカスできなかったんですよねぇ。今回の映画の中ではV6岡田くん系の男前ぶりが(岡田くんファンは納得しないかな)観られました!
男前が一瞬くずれて、にやけたようなスケベなようなかわいらしいような表情を見せる…のが彼うまいのですが、今回は彼が「…み!」というシーン。これはファンは萌え萌えでしょうねぇ〜

ストーリーとしては、お互いがこれまでの恋愛相手と違って特別だ、とわかるようなエピソードが少しでもあれば深みがあったのになぁと思ったのですが、それ以外の要素で楽しませてもらえたので、お気に入り映画入りです。

バンドのボーカルという設定の仔仔が歌う曲が以下二つ。
主題歌になっている「愛你一萬年」はなんと沢田研二のカバーなのですねぇ!なんかかっちょいいメロディーラインだなと思ったらさすが。でもアレンジは仔仔バージョンのほうが好きです。
どっちもMVには映画のシーンが使われているので、ご参考に!

♪周渝民 – 愛你一萬年MV

♪愛你一萬年片尾曲 仔仔 [我在想你的時候睡著了] MV

映画「soul kitchen」

今日はクロッキー会と画材買出し、の合間に映画を観てきました。
「Soul kitchen」。次の個展のテーマは食堂だしー、レディースデーだしー、という言い訳しながら…
あ、ソウルは「魂」のほうで、韓国の方ではありません。ソウルフード、ソウルミュージックのソウル。ドイツの映画です。

新聞のレビューで、なんとなく好みそうだなというアタリをつけて行ったのですが、ビンゴ!
ビジュアルも音楽もノリも好みでした。イェイイェイ。

やっとこさ経営しているような庶民派レストランに、仮出所の兄がやってきて、土地狙いの不動産屋がやってきて、天才シェフがやってきて、ミュージシャンもいて、恋人とはすれ違い…とまぁ、ドタバタものなのですが、そこに「ソウル」フードと音楽が絡めばそりゃもうご機嫌なわけです。
ドイツの移民問題もさりげなく織り込まれ…というのは解説を読んで把握したことですが(日本人にはわかりづらいですね)、なるほど多国籍風な、登場人物の個性豊かなルックスも混ざり合って、なんともええ感じの映画となっていました。
でっかいスクリーンでこの映画流しながら、ガツン系フードをわいわい食べたら楽しいやろうなぁー!

★予告編を…日本語バージョンよりこちらのほうがより雰囲気が伝わる気がするので英語のほうで…

そして音楽とビジュアル、もうエンドロールまでめっちゃかっこいいのです。エンドロールこそ観て、というか。ソウル・ミュージックのレコードジャケットの、ぶっといフォントばーん!派手シブな色使いドーン!写真コラージュじゃーん!みたいなあの感じ。(動画上がってないかなぁと探したけど、なかった…)

これはサントラもチェックせなーと思ってるのですが、残念ながらサントラのジャケットだとその雰囲気は薄いかな…
soul kitchen sound truck
むしろUKロックな感じ、決して嫌いじゃないけど、映画のパンフレットとかポスターのこっち↓のビジュアルのほうがぽいなぁと思うので、そこは残念…。

ドイツ版とか

UK版

のほうがまだ映画の雰囲気かなー…と思ったりも…(でも中のブックレットも気になるしね!)

モンガに散る(原題:艋舺 MONGA)


台湾映画、「モンガに散る(原題:艋舺 MONGA)」を観てきました。
今年、台湾でNo.1ヒット、「海角七号」に次いで歴代二位になったという作品です。
http://www.monga-chiru.com/
(※ムービーが流れます)

※海角七号について書いた過去の日記→
さらにつっこんで書いたmixi日記→

事前に知っていたのはヤクザ映画ということ。
暴力、ケンカ、流血、男の友情…普段なら絶対観ないジャンルです。
が、台湾映画です。
台湾のことなら何でも知りたい病です。
観ることにしました。

よく作り上げられた映画です。暴力シーンはやっぱり苦手で心臓がバクバクしてしんどくなってしまいますが、状況の変化に煽られて、人の心情や、関係が少しずつずれていく様には自然に共感、引きこまれました。
黒社会に足を突っ込んだやつらにも関わらず、登場人物の中にやさしさとか、のんびりした空気を感じる部分には、私の好きな台湾があるなぁと思ったのですが、登場人物にリアリティがあるというのはこの映画の大きな要素だったと思います。若い主人公たちが、悪ぶっててもビビるときは普通にビビったり、愛嬌は隠しようもなかったり…。登場人物それぞれの性格、内に抱えているもの、置かれた状況と物語のリンクの仕方が素晴らしく、映画の密度がぐいーーっと高まっていたように思います。

父親不在のモスキートが無意識に求めていたもの、どうしようもない時代変化の渦の中で、頭が切れるが故に決定的な引き金を引いてしまうことになるモンク、年老いた父親を一人で守りながら暮らす白ザル(役のニックネームです)が、仲間内の世界でもやはり一人きりで戦いに飛び出していくシーンも苦しいです。
ヤクザ映画とはいえ、環境が大きく変わる中、「ナンバー2」である主人公がどう行動するのか、リーダーを守るべきか切るべきか、本当にそうするしかなかったのか、自分自身にも感情はあるし身も守らなくてはいけない…という状況は普遍的で、いろいろな見方ができておもしろいのではないかと思います。

あと、この映画に限りませんが、台湾映画って外国映画(ドラマ)にありがちな、今の表現ちょっと意味わかんないけど、こういうこと…?というような、感情表現への違和感というのがあんまりありません。普通に日本人見てるのと同じように理解できる。
顔立ちが似てるのもあると思うのですが、それも物語に入り込みやすかった理由かな。

素敵だと思ったのは、この映画がNo.1になった、台湾の人の感性です。わかりにくくは決してないし、よく練られた台本なのですが、仮にこれが日本映画だったとして「大」ヒットにはならないだろうなぁと。
台湾の映画事情に詳しいわけではないので言い切ることはできないのですが、少なくともハリウッド映画レベルのものは日本と同じように入ってると思います。そんな中でこの映画が「1番」になるのってすごい。(同時期に公開されたアバターは抜いたそうですので…)
音楽でも、ロックよりもボサノバが大人気というお国柄だそうですが、わかりやすさ/派手さ/目新しさにひっぱられるのではなく、じっくり受け止めるところにおもしろさがある、こういうものが国民的に受け入れられるというのはすごいなぁと思いました。

モンガという地名には「小舟」という意味があるそうです。
映画を観てしばらくしてから思ったのですが、描かれるモンガの姿は、台湾そのものではないのかと。
舞台は80年代。のさばり始める大陸勢力に対する反発と同調、主人公が小さくつぶやく日本への憧れ。
監督の意向がどうだったかはわからないのですが、一旦そう思うとそうとしか思えない…

…と思ってたら、監督インタビューありました。
やっぱりそうみたいです。
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/101224/tnr1012240746005-n1.htm
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/cinema/cnews/20101224-OYT8T00565.htm

ちなみにこのニウ・チェンザー(鈕承澤)監督、元々俳優さんで、自身もある役で登場しているのですが、すごくいいです。なんだろう、あのスッとした、なのにすごい存在感…
主人公の一人、モンクを演じたイーサン・ルアン(阮經天)も静かなのに凄みもあって良いのですが、調べたらこの二人は師弟関係みたいな感じらしくて、なんか納得でした。