インゲル・ヨハンネ・ラスムッセンさん

リテリング フェルト・アートの世界

リテリング フェルト・アートの世界
ノルウェーのテキスタイル作家、インゲル・ヨハンネ・ラスムッセンさんの本。
偶然書店で手に取ったのですが、すごく好きな色×パターンの世界でした。

日本人編集者である若井浩子さんとの共著になっていますが、若井さんのインゲルさんをリスペクトするまなざしがとても素敵。
インゲルさんの、創作にまつわる言葉にも引き込まれました。
また、中身は作品紹介にとどまらず、オスロの街の観光ガイドにもなりそうな素敵な内容になっています。(その分、もっと作品がみたい!!という気持ちにもなったのですが、それはまた次の楽しみにということにしましょう)

本の「感じ」も、とても好きだなぁ…と思ってたら、ディレクション&デザインが、私がこのところ「すごく好きかも!!」と思ってるディレクターさん/デザイン事務所によるもので、ますます嬉しくなりました。
色や構成の勉強にもなりそうだなー

舟越桂さん

東京都庭園美術館で開催中の舟越桂さんの個展を観てきました。

舟越さんの作品を生で拝見するのは初めて。
素晴らしいの一言に尽きました…

作品の醸し出すたたずまい感にうっとりし、無心になり、
もうこの空気に溶けちゃいたいと。

フォルムとして「奇抜な」ものもありますが、決してそれが理由ではないです。
もっと普遍的な、何か。

「雪の上の陰」(The Shadow on Snow,2002)や
「水に映る月触」(A Lunar Eclipse on the Water,2003)
などの、美しい女性像は比較的馴染みやすく、舟越さんの作品として連想されやすいものだと思います。
一方で、
「戦争をみるスフィンクス?」(The Sphinx Sees War?)の表情から伝わる感情には圧倒されました。これはぜひ、写真ではなく直接観ていただきたいです。
スフィンクスシリーズからは、舟越さんのこれまでの「穏やかで優しい」ものとは違う、力強さ、激しさが感じられます。戸惑いも感じるのですが、それ以上に、もっと目を凝らしてみたい、とも思うのです。

あと、どの作品からも音楽が聞こえるような感じがしますね。
具体的なメロディーというのではないのですが
「夜は夜に」(A Night Will Stay,2003)には「Music of the Night」だなぁーと
一人で勝手に感じいってました。

関東にお住まいの方、東京に出向く機会のある方はぜひ!

京都(2)

kanzan

さてさて、京都行きの目的は京都文化博物館で開催中の「乾山の芸術と光琳」でした。
尾形乾山は江戸中期に人気を博した「乾山焼」の創始者で、画家の尾形光琳の弟にあたります。

この二人の兄弟は、もともと裕福な呉服商の家に生まれるのですが、やがて家業は傾き、父親から受け継いだ遺産の手形も回収不能となり、生活のためにそれぞれ絵画、陶芸を志し、やがて名を成すこととなります。

おもしろいのが、
兄の光琳は派手好きで裕福な生活が忘れられず、弟の乾山にまで借金をし、
一方の弟は子どもの頃から内省的な性格で、陶芸に関わる事になったのも、遺産相続後早々に隠居生活に入ってしまったのがきっかけだった…ということ。
とはいえ、二人が対立して不仲になったということではなく、やがて江戸で成功をおさめた光琳は京都に戻り、弟の陶芸に絵付けをする形で協力し、すぐれた作品を残していきます。

このあたりの兄弟の性格の違いと、それでもうまくつながっていくところ、なんともリアルで、またふたりの信頼関係が感じられていいなぁと思います。

性格の違いといえば、乾山も絵を描いているのですが、二人の絵の違いも性格を如実に表していておもしろい!
光琳の絵はメリハリのある画面構成で迫力があり、「クール!」という表現がぴったりですが
乾山の絵はなんとなくのほほん、として力の抜けたかわいげのあるものです。
二人の筆跡を見てても同じ事が感じられます。

そんな二人がタッグを組んで作品を生み出していく…すごくおもしろかったでしょうね!

また、乾山は商才にも長けていたようで、当初は京都の鳴滝に釜をかまえて芸の追究並びに特定の顧客の注文に応じる形での制作に打ち込みますが、やがて人気が出てくると拠点を町中に移し、より多くの人に多くのものを販売する業態に転じ、成功していきます。
ちょうどこの頃が乾山×光琳の作品の時期と重なり、職人気質かつ商売上手の弟と、人気画家の兄とがいわば優秀なプロデューサーとデザイナーの組み合わせで人気を博していくのですね。

そんな乾山の陶芸は、創意工夫に富みデザインセンスも抜群で、現代にあっても絶対人気商品間違いなしのモダンさです。
色絵椿文向付」なんて北欧デザインか!?て感じです。

思えば、大学時代なんぞこういった美術史は必修科目だったにも関わらず全くまじめに取り組んでなかったのですが、
今頃になって興味が出てくると、ホントおもしろい。
昔はおもしろくなかったことが、おもしろく感じられるようになるというのも幸せなことだなぁと思ったりします。

今日のことば

「何年かかってもよいでしょう。
自分を出そうとしなくても、見た感じを逃さぬように心掛けてゆけば、その都度違う表現となって、いつのまにか一枚の葉っぱが手にはいりますよ。
一枚の葉っぱが手に入ったら、宇宙全体が手に入ります。」

日本画家・小倉遊亀さんが師匠である安田靫彦氏に言われた言葉。

自分の表現としての絵を描くときはもちろん、何事であっても自分の思いを形にするときにはあてはまる言葉だと思います。
「見た感じを逃さぬよう、表現しつづけていく」ことの積み重ねこそを、自分自身の人生だと振り返ることができるのだろうな。